(後半)RICOH360が実現する世界とは

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2013年に360度での撮影が可能なRICOH THETAをリリースした株式会社リコー。前回の取材では、リコーの執行役員でありSmart Vision事業本部の事業本部長・大谷渉(おおたに わたる)氏に、RICOH THETAによる360度全天球画像・映像ブランド「RICOH360」の成り立ちを中心に伺いました。

サブスクリプションモデルで展開される「THETA 360.biz」や「RICOH360 – Ad」といった、RICOH360のサービスについてより分かりやすくご紹介していきます。

顧客のニーズに合わせた価値を創造する

―サブスクリプションモデルを採用した理由をお聞かせください

大谷さん:前回、「ユーザーがカスタマイズできるモデルを展開したい」とお話ししました。サブスクリプションは、ユーザーが古いものを捨てて新しいものを使う契約モデルで、ユーザーにとってもメリットが大きい。

今はIoT(Internet of Things)で様々なことができる時代になっていて、ユーザーも新しいことに関心があります。新しい技術などが出る時は、その都度、ユーザー自身が選べるようにしたいです。

―サブスクリプションモデルで重要なポイントは?

大谷さん:可能な限りいろいろなメニューを増やしていくことです。「RICOH360」と銘打ったのも、360度のことであればなんでも提供できる状態にしたいからです。そうすることでサービスの陳腐化を防げますし、ユーザーニーズに応えられる形で提供できます。

―展開の仕方で参考にされているサービスはありますか?

大谷さん:Adobe Creative Cloudをはじめ、Salesforceなどを事例として研究し、参考にしています。最初のタッチポイントとして、無料のサービスで興味を持ってもらい、サブスクリプションでの契約が理想です。また多くの人に認知してもらいたいので、いろいろな機会を使って多面的に展開しようと考えています。

顧客が求めるサービスとは?

―RICOH360にはどのようなサービスがあるのですか?

大谷さん:まず、「THETA 360.biz」では、クラウドを使って360度画像のビューワーを展開しています。お客様は360度で撮影した写真をクラウド上に保存できるだけでなく、Webサイトに埋め込むためのコードを取得できます。

これによりエンドユーザーは、特別なアプリケーションを使うことなく360度画像の閲覧が可能になりますし、360度の画像内を行ったり来たりできるツアーも簡単に作ることができます。
例えば、不動産では、お客様が場所や時間を問わずお部屋の様子を見られますので、お客様の利便性はもちろん、営業効率や決定率を上げることができます。

また飲食店ではお店の雰囲気を伝えることができます。さらに観光や自動車以外にも、最近では、求人のためにオフィスなどの働く場所を見せるケースもあります。

―広告用のサービスもあると伺っています

大谷さん:「RICOH360 – Ad」では、360度のWebバナー広告を提供しています。Web上の広告は静止画ではなかなかクリックされなくなってきました。だからといってクリック率の良い動画にすると、制作費や配信コストがかかります。RICOH360 – Adなら、静止画を映像のように表示することができるため、静止画と同等のコストで、動画と同じ注目度が得られます。

我々が保有する500万枚の360度画像をもとに人がよく注目する画像の領域をAIで学習することで、人が注目する、訴求する広告を作り上げることができます。蓄積した画像データの活用によるサービスもRICOH360が提供する新たな価値です。

時空を超えるサービスを提供する

―法人のニーズにはどういったものがありますか?

大谷さん:いろいろとありますが、例えばホームステージングの需要に応えています。ホームステージングとは、物件の紹介で空いた部屋に実際に家具を置いて、モデルルームのようにして写真を撮る手法です。何も置かないのに比べて、短期間で物件が成約すると言われています。ただ、これでは物を運び入れる際に、時間やお金などコストがかかってしまいます。

RICOH360 VRステージング」であれば簡単に解決できます。360度の写真にCGで作った家具や小物などを装飾して配置でき、空間をより魅力的に見せます。バーチャルであれば、和風でも北欧風でも一瞬で切り替えられ、手間もコストもかかりません。

―他にも使い方に幅がありそうですね

大谷さん:何度か例に出しましたが、建築の現場でも使えます。建築現場ではコミュニケーションロスが激しいことが問題視されています。というのも、いろいろな業者が入って、様々な工数を組み合わせていることが原因です。例えば、窓枠を嵌めるということでも間違った施工が行われることがあると言われています。

RICOH THETAの360度写真を使えば、画像を見ながら「今日はこれをつけてね」という指示ができます。画像や映像で見ることが一番わかりやすいので、現場でのミスもほとんどなくなってくると思います。

―ずばり、360度の本質とは何ですか?

大谷さん:コミュニケーションや記録以外に、時空を超えられることですね。10年、20年と、360度のデータをサーバーに蓄積すると、時間を超えたバーチャルツアーが可能になります。

これは時間を超えたタイムマシンと言えます。空間を超える例としては、RICOH THETA利用者の中には、エベレストの頂上や海の中など、他の人ではいけないような場所で360度写真を撮っている人もいます。これは、自分では行けないような所に空間を超えて行けちゃうことになります。

コンシューマ向けでもビジネス向けでも360度の画像によって時間や空間を超えた体験ができる。時空を超えられることが、価値の本質になっていると考えます。

RICOHが世界のプラットフォームとなる

―海外での展開もされているのでしょうか

大谷さん:全体的には海外展開を早く始めたいと考えていますが、米国で「THETA 360.biz」と同等のサービスを展開しています。近々、ヨーロッパ圏への進出もプランにあります。

―海外展開は参入が難しいのでは?

大谷さん:確かに、国が違えばビジネスのやり方やプレイヤー構造も違うので、現地になるべく合わせる形で提携を増やしていきたいと考えています。すでに「RICOH360 VRステージング」も「RICOH360 – Ad」もスタートアップ等と組んでいます。

スタートアップといっても、現地のニーズを汲んでシングルソリューションを行なっている会社も数多くあります。そういった会社とアライアンスを組む形で、リコーのプラットホームに乗せていければと考えています。

―提携することでのメリットを教えてください

大谷さん:リコーは全世界に販売チャネル(お客様)を持っています。アライアンスを組んだ会社にとっては、リコーのお客さんにリーチできる機会。

また私たちにとっても、ユーザーに対してサービスのメニューを幅広く提供できるので、Win-Winな関係が築けます。そういった意味では、リコーだけで展開するよりも現地でニーズを知っている会社と組んでやっていきたいと考えています。

おわり

ブランドを統合したことで、さらに価値の広がりを見せるRICOH360。時空を超えるコンテンツはエンドユーザーや企業にとって魅力的であることは間違いありません。サブスクリプションモデルを採用し、次々と新しい展開を見せるRICOH360は今後も目が離せません。

THETA 360.biz」や「RICOH360 – Ad」、「RICOH360 VRステージング」「RICOH360 – Analysis」など、様々なサービスを組み合わせた利用が可能です。360度の写真があればWebサイト上の集客や広告が可能になる、不動産物件の紹介写真をそのまま広告として出せるなど、ユーザー自身でカスタマイズできる展開がありがたいですね。